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萌えメモ的な何か
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君 連れ去る時の訪れを
ココさんがうじうじし過ぎて全然完成しなかったssがやっとできました。
元ネタ分かる人は私ときっと同世代!

【諸注意】
・オゾン草編直前のお話です。
・ココさんがうじうじしててめんどくさいです。
・あれ、いつもか?
・じゃあ注意ないです!^^(ニコッ☆)



見たくもない夢をみた。


夢の中で君はボクが見たこともないような笑顔で笑っていた。
歩幅の違う足音がふたつ、ボクから遠ざかる。
二人の行く先には眩いばかりの光が射している。

そしてボクは、その光を前に、動くこともできず立ち尽くした。



「あれ、ココさん、どうしたんですか?」

糊のきいた仕事着に身を包んだ小松くんは、その大きな瞳にボクの姿を捉えると、ぱちぱちと瞬きをしながら不思議そうな声をあげた。
彼が不思議に思うのも無理はない。
ここは地上97階のホテルグルメの展望レストラン、彼の仕事場で、彼は仕事中だ。
ボクは滅多に此処を訪れることはないし、訪れるとしても予約を入れないことはなかった。

「たまには、ここで小松くんの料理を食べるのもいいかな、って思ってね。」

「すみません、事前に予約さえ入れて下されば、きちんと御もてなしできたんですが…」

「いや、ボクこそ、なんの連絡もなく来て、悪かったね。」

レストランのスタッフはボクが四天王の一員であることを知ると、即座に空いていた予約客用の個室をセッティングして、料理長である小松くんを呼んでくれた。有名すぎる四天王の肩書を疎ましく思ったことは数あれど、感謝したのは今日が初めてだ。

だが、閉店間際のレストランは、此処を一躍有名にしたセンチュリースープを始め、人気メニューは品切れとなっていた。
目の前の小松くんは、そのことを気にしてか、先ほどから眉尻を下げて元気がない。

「気にしないでよ、小松くん。」

「でも、折角ココさんが来て下さったのに…」

「いいんだ、ボクはね、実は言うと、小松くんの顔を見に来ただけなんだ。」

「ボクのですか?」

小松くんは裏返った大声を上げて、何も付いていないというのに自分の顔をぺたぺたと撫でまわすと首をかしげた。ボクはその様子を顔の前で手を組んで眺める。思わず頬が緩んでしまうのが自分でもわかって、さりげなく口元を組んだ手で隠す。

「もしよかったら、小松くんの仕事が終わるまで待っていてもいいかな。」

「え、そんな、申し訳ないですよ!」

ボクの申し出に、小松くんは目の前で手をぶんぶんとふってそう答えた。
けれども、今日のボクは引き下がるつもりはなかった。

「ボクが待ちたいだけだから、気にしないで。」

ボクがじっと見つめてこう言うと、小松くんは一瞬思案したのち、パッと笑顔になってこう答えた。

「…わかりました!テンションギガギガで片付けてきます!」

言うが早いか、ボクに向かってぱたぱたと手を振りながら、小走りで厨房に戻って行った。その姿は料理長らしくはなくて、ボクは思わず噴き出してしまったけれど、そんな小さな背中がボクはとてもいとおしかった。


それからしばらくして、ホテルのロビーで待つボクの前に仕事着から着替えた小松くんが姿を見せた。大きな声でボクの名前を呼びながら、大きな足音をたてて、大急ぎでボクの元へとかけてこようとして、支配人らしき中年の男性に苦い顔で注意をされていた。
慌てて謝っていたものの、ボクの隣に並んだ小松くんはにこにこと笑っていて、ボクも思わずくすっと笑ってしまう。

「お待たせしてすみませんでした。」

「いや、そんなに待ってないよ。思ったよりも随分早かったね。」

「実は、みんながココさんをお待たせしてはいけないって言って、ボクの分の仕事を引き受けて早めに上がらせてくれたんです。」

「そうなんだ、小松くんは部下の皆さんからの人望があるんだね。」

「いやー、ははは、みんなボクには勿体ないくらいよくできた部下たちです。」

小松くんは頭の後ろを掻きながら、照れたようにそう言った。申し訳ない、埋め合わせしなきゃ、と口の中でもごもごと独り言を言っている。
きっと小松くんのことだから、今まで逆の立場で部下の分の仕事を引き受けてきたのだろう。ボクは彼の仕事仲間の顔は知らないけれど、慕われる彼の姿は容易に想像できた。

「それで、今日はなんのご用事だったんですか?」

「だから、小松くんの顔を見に来ただけだって、言っただろう?」

「もう!さすがに騙されませんよ!」

真剣な目をしてボクを見つめる小松くんと目を合わせる。数秒して、ボクはざわめく胸の内を悟られることのないよう気を使って、つとめてさりげない声で切りだした。

「最近、トリコの奴に会ったかい?」

「え?トリコさんですか?そういえばしばらく会ってないですけど…あ、でも、明日の夕食をグルメタウンで一緒に食べる約束をしています!」

グルメタワーの上層階なんて、トリコさんと一緒でなければ入れませんもんね、すごく楽しみです、と小松くんは無邪気にはしゃいでいる。行く予定の焼き肉店の下調べもしっかり済ませているようで、ボクに向かってそのお店のこだわりやどんな食材を使っていてどんなメニューが売りなのかを身振り手振りも交えながら、熱く語っていた。


そうか、明日か。


「でもココさん、どうしたんですか?急に…」

「いや…」

ボクが答えに困ってどう濁そうかと考えていると、目の前が急に明るくなった。
街灯もない狭い道を歩いていたのだけれど、たまたま車が入ってきたのだ。暗闇に慣れた目にヘッドライトの明かりは眩しすぎて、小松くんは思わず目を閉じた。
「危ない!」とボクは小松くんの手を引いて、道の端に寄った。

「ありがとうございます、ココさん…」

思わず握ってしまった手は、ボクのものよりもずっとずっと小さくて、あたたかくて、知ってはいたけれど認めたくなかった感情を呼び起こさせた。
車が去ってまた住宅街に暗闇と静けさが戻ってきた。でもボクは手を離さなかった。

「ココさん?」

手を離さないボクを不審に思ったのだろう、小松くんがボクを見上げた。

「手を繋いだら」

小さな手を握る手に力を込める。

「二度と離れない」

自分のものとは思えない、絞り出すような声が出た。


「そんな出会いが、よかったよ。」


この手を離したくなかった。
明日、トリコは小松くんをハントに誘うだろう。
ある決意を秘めて。

「ココさん…」

「いいんだ、わかっているから。」

「もしかして…」

「ボクの我が儘だってことくらい。」


「ぼ、ボクに、死相でも、見えますか…?」


予想外の言葉に返す言葉を見失っていると、小松くんは目に見えてがたがたと震えだした。

「や、やっぱりそうなんだ…!ココさんがわざわざレストランまでボクを尋ねてくるなんておかしいと思ったんですよ!占いでそう出たんですね?!
どうしよう、どうしよう、どうしたらいいですか?!まず遺書ですか?!」

取り乱して涙目になって大声を出す小松くんをなんとかなだめようと屈んで目線を合わせて肩をたたく。
深夜の住宅街の真ん中で大声を出すものだから、近隣の住民が目を覚まして、次々と明かりをつけ始めた。苦情が出るのも時間の問題だ。

小松くんの手を引くと、ボクは走り始めた。
戸惑いながらもボクに引かれて小松くんも走り出す。

「大丈夫だよ、小松くん」

走りながらボクは振り返り、後ろの小松くんに向かってほほ笑む。
まだ手を繋いでいられることが嬉しくて、切なかった。

「え?」

小松くんは足をもつれさせながら、目を見開いた。
その手はボクの手を握り返してくれていた。

「君に見えるのは、死相なんかじゃない。」

そう、ボクが見た夢は、光に満ちていた。目も眩むほどの。
逆光に浮かび上がる大小ふたつの人影を思い出す。



「近いうちに、君にはこれ以上ないくらいの幸せが訪れるよ。」



だから、ボクは、この手を離した方がいいんだ。
ボクは知っているよ。

今が








君 連れ去る時の訪れだということを。


ココさんがいまだにプロポーズしない理由についてちょっと考えた結果です。
この後、色々ぐるぐるぐじぐじした後に、「やっぱ無理だ!」と大人げなく小松くんに告白するココさんが私は見たいです←

あとこれ、できるだけ元ネタ変えたくなかったんですけど、最後の一文の「連れ去る」の主語は「時」なんですよ。でもわかりづらいですよねー
pixivにはちょっと変えて載せようと思います。
でもブログはこのままにしとく!
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